自分の「うつ」を治した精神科医の方法 by 宮島賢也 【書評】

心のはなし

今年の2月に田中圭一さんが描いたマンガ「うつヌケ」を読んでいて、そのなかで出てくる本がとても気になっていました。

↓ このときに書いたブログです。

 

その本がこの

 

自分の「うつ」を治した精神科医の方法

 

です。

 

この本の作者である宮島先生は、ご自身が精神科医であるにも関わらず、自分自身がうつ病になっていた方です。

 

一冊の本(成功の9ステップ)との出会いが、うつ脱出のきっかけになったのだそうです

この宮島先生も一冊の本との出会いがきっかけでうつ病を脱出されたことを、この本のなかで書かれています。

その本は、ジェームス・スキナーさんの「成功の9ステップ」という本だったそうです。この本の中にある

 

医者は健康のことについて、何も知らない

 

というようなことが書いてあるとのことでした。

 

この「成功の9ステップ」という本の中にはこういう記述があったのだそうです。

 

医師はもともと、病気の専門家である。ありとあらゆる病気の定義を持っている。しかし、健康のことともなれば、ほとんどは回答不能に陥ってしまうだろう

 

こうしたアメリカの事情は日本と変わらず、さらに日本のほうがこの傾向が強いとのことでした。

 

宮島先生もこう書かれています。

 

医師は、対処療法(症状を抑える・治す)の専門家であっても、健康の専門家ではありません。ですから、これは一般論ですが、治療に関心をもっていても、健康の維持や増進、病気の予防には関心がありません。というより、健康や病気の予防ということについては、思いが至っていないのです。

 

私もたまに知り合いの医者と酒の席で話をすることがありまして、そのときによく聞く話は、他の医者や尊敬する医者の話でも、その治療する技術力やより困難な病気へどのように対応していくか?という話になることが多いです。健康や病気の予防という話には確かにならないですねぇ。

まぁ、友だちなのでおばかなお話もしたりするのですけど、比較的治りが早い病気にはあまり興味をもたない、、そういう感じにも聞こえることが多いので、一般市民としての私はたまに引く・・・ということがありました。あ、、もちろんいろんな病名が話しているうちに出てきて、私はちんぷんかんぷん・・・、あのーその病気の話をしながら、だし巻きたまごを食べるの?という感じ・・・(^^;)

・・・脱線しました。たぶん医者の職業病みたいなもんだ。こういう話をするのは。

 

「成功の9ステップ」の中には、次に挙げるような(宮島先生から見て)魅力的な小見出しがたくさんあったとのことです。そのうち読んでみようかなと思います。

 

今の自分はどうしてこうなのか

気持ちを紛らわすだけでは成功できない

自分の連想をコントロールし、自分の人生をコントロールしよう

事実を把握する

望む結果を明確にする

言葉は状態の引き金になる

言葉は感情の増幅器である

プラスの言葉、マイナスの言葉

自分は何がほしいのか明確にせよ!

理想の人間関係を手に入れる

「ノー」は、人生の中で学ぶべき最も大切な言葉である

あなたの最も大切な目標は何なのか

始めたからといって、やり続けなければならないことはない

 

宮島先生はこの本を熟読し、ご自身の半生を振り返ったそうです。すると「自分がうつになった根本の原因」が明らかになってきたそうです。

 

親子関係がうつの根本にあります

宮島先生の場合、父親が大企業のサラリーマン、母親は有名な女子大を出た元高校教師で、自宅で英語塾を開いていたそうです。

物心ついたときから父親と母親が仲良くしているのを見たことがなく、よくご両親がケンカしていたそうで、それが低学年のころまで続いたそうです。その後、父親は仕事一辺倒、ご両親は直接向き合うことなく仮面夫婦のような関係になり、次第に「母と僕が向き合う構図」へと変わっていったそうです。いわゆる教育ママになったそうです。名門学校への進学を強調し、猛烈な詰め込み式の勉強・・・、次第に宮島少年の心が苦しくなってきます。母親にとっては「学歴」が人を評価する基準になっていたんですね。その固定観念が子供である宮島少年に多大な影響を与えたわけです。そのうち自分への無価値感に引きづられて自殺願望まで高校生のときに出てきます。そういうときに「医師なら無価値な自分でも人の役に立てるかもしれない」と思って医者を志したということをこの本で述べられています。

そもそも本当に自分がほしいことなのか?ではなく他人の判断、価値でいいかもしれない、という考え方自体が自分をつらくしていく状況を作っているのが、この宮島先生の話でも伝わっていきます。この

 

「自分への無価値感」=「自己肯定感のなさ」

 

がうつの原因となります。そのうつの根本は、この宮島先生の事例でも出てくるとおり、親子関係が大きいのです。「うつ」が表面的(最初に出てくるきっかけ)は、リストラ、経済的破綻、パワハラ、離婚などの職場や家庭での人間関係によるストレスですが、根本はこの「親子関係」に集約されていきます。

よくカウンセリングを行っていっても必ず避けては通れないと断言できるこの「親子関係」が一番のポイントなのです。

 

こんなこともわからないのか?ばかもの!

何をやってもお前は役に立たないわね!この役立たず!

どれだけ勉強すれば上位に上がれるの!

なぜ○○ちゃんは国語の成績がいいのにあなたはダメなの?!

勉強ができないあなたは大嫌い!今日のごはんありませんからね!

 

こういうことを子供のころから親に言われ続けたら、

 

私は私でいいんだぁ。

 

と自分を肯定する力である自己肯定感(宮島先生の本では、自尊心という言葉で出てきます)をもてず、自責や自己否定の観念(考え)が強く育ちます。

 

私は私が嫌い

自分が好きになれない

自分を愛することができない

母の要求を満たせなかったら私が生きる価値がない

 

この自己否定の観念が自動反応まで起こる状況になってしまい、この観念が脳内に存在していることが、うつのほんとうの原因です。

 

こういったうつの原因について、この本は宮島先生の例を元に丁寧に説明されています。それだけ今は俯瞰してご自身を掴まれたのだ(自己肯定感の復活)と思います。

 

精神科医は「心の専門家」ではありません

一般の人は、精神科医のことを「心の専門家」と思っているでしょうが、それは大いなる誤解です。僕はこのことを、「心の専門家幻想」と呼んでいます。

なかには「精神科医は医者ではなくカウンセラーだ」と思っている人もいるようですが、それも認識違いです。

(略)

現在では、「臨床心理士」がいて、必要に応じて、カウンセリングをおこないます。しかし、精神科の医師がカウンセリングを行うわけではありません。

 

本にはこのような記述が登場します。ほんとうにこのとおりだと思います。

 

私も精神を病み、精神科(もしくは心療内科)に出向いたことがあります。しかし、そこにはカウンセリングという行為はなく、初回は10分ほど精神科医からヒアリングがあり、病名を付けられ、薬の処方を行って終わりです。次回からの診察はほとんどは「最近の調子はどうですか~?」という質問くらいで5分ほどで終わります。あとはひたすら薬物療法です。

そして精神科医は、自分が処方した薬が、実際に患者へ投与した場合にどのように変化するのか?ということをきちんと説明できる人はおそらくほとんどいないと思います。薬の情報として副作用の情報があるわけですけれど、薬(脳内物質)を変化させたら患者本人がどのように変化するか、病気が治るのかどうかをそもそも補償することもできません。

カウンセリングに臨床心理士がいるから・・・といっても、ほとんどの精神科・心療内科には臨床心理士がいるところはほとんどありません。今では少しずつですが認知行動療法をすすめる大学や病院が出てきたくらいで、今の時点でも薬物療法が精神科の基本となっています。

 

これでは、うつの本当の原因、親子関係や自己肯定感の改善に治療が向かいません。

 

ですから、宮島先生も

 

だから、精神科医はうつ病を根治できない

 

とこの本では書かれています。

 

 

僕が変われたのだからあなたもきっと変われる

本の後半からは宮島先生がどのようにうつ病を改善していたかを具体的に記述されています。以下に混み出しの一部を書きますので、ぜひ読んでいただけたらと思います。

 

まずは、今の自分を受け入れてあげよう

自分を苦しめる考え方から、楽にする考え方へ

ネガティブな言葉をやめてみよう

潜在意識を変える自己暗示の方法

自分で気づく「メンタルセラピー」の手法

「仕事はつらい」という考え方を捨てよう

ストレスや不安を紙に書いて明確化する

解決できないストレスは、悩むだけ損

考え方は無限大にある

考え方を変えて、うつを克服した人たち

 

などなど。特に、「潜在意識を変える自己暗示の方法」はオススメです。

 

 

まとめ

精神科医が自分のうつ病をどのように克服していったのかを明確に書いてある本であったり、現在の精神医療の問題点をここまで明確に書かれている本はそうそうありません。そういう意味ではとっても貴重な本であるとともに、本当にうつ病で苦しんでいる方にぜひ手にとって読んでいただきたいと思いご紹介しました。

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