カラフル by 森 絵都 ~アドラー心理学「課題の分離」もわかる不朽の名作 【書評】

書評

最初にこの「カラフル」を知ったのは小説ではなくて、アニメ「Colorful」を見て知りました。

 

当時は今とは別の街に住んでいて近くのレンタルショップに行くと、そこでふと、それこそカラフルな花に囲まれた中学生のパッケージの絵に惹かれ、DVDを借りて見ることにしました。この小説を再度読むまでは恥ずかしながらストーリーを忘れていたんですが、おもしろいアニメだったという「感覚」だけが残っていて、いつかは小説を読もうと思っていました。

 

そして、6年経って、ようやく手に取ったのです。

 

「カラフル」のあらすじ

おめでとうございます、抽選に当たりました!

 

一度死んだはず「ぼく」の魂は、万物の父「ボス」の抽選により、再挑戦を受けることになった。

 

そもそも「ぼく」は大きな過ちを犯して死んでしまった罪な魂であるため、通常は輪廻のサイクルから外されるところを再挑戦で修行をして、前世で犯した過ちの大きさを「ぼく」が自覚できたら再挑戦は終わり。みごと輪廻のサイクルに戻ることができるらしい。

 

「ぼく」は自殺した中学3年生の小林真の身体にホームステイすることになり、再挑戦期間は1年。この世に復帰した「ぼく」は、始めは心地よい小林家に触れ、学校に行くようになるのだけど、やがて家族の欠点が見えてきてしまって、真の学校での様子がわかってくるようになると、次第になぜ小林真が自殺をしたのか、その真相を知ることとなるんです。

 

知れば知るほど真ってのは損なやつでさ。内気でおとなしくて、だれにもなにも言えなくて結局死んじゃった。

 

「ぼく」は小林真の人生を体験しながらさまざまな人間模様を垣間見て、みずから真の人生を作り上げていくなかで、前世の過ちに気がつき輪廻のサイクルに戻ることができるのだろうか?

 

 

というストーリーです。アニメもこんな感じだったかなぁ(^^;)

 

「カラフル」を読んでみて思ったこと(感想)

小説「カラフル」は、文集文庫 高校生が選んだBEST10 第1位なのだそうです。多くの子供たちに読み継がれている本なんですね。それに子供たちだけでなく、おそらくたくさんの大人も読んでいる本だと思います(私も含めて)。

 

その本が扱っている題材の1つは輪廻転生です。・・・いえ、輪廻転生をも普通にあるのが前提として、小林真の家庭(父、母、兄)や友だちをすごく

 

客観視している「ぼく」が歩む人生の物語

 

です。

 

日本はたぶん仏教徒が多い国だと思うのですけれど、ほとんどの人がおそらくこの輪廻転生を自然に受け入れているのかもしれません。

 

まぁ、この本の場合は物語ですから架空の出来事として読んでいる人も多いかもしれませんが・・・。ほんとうはもう修行をする必要もないくらい高貴な魂が輪廻から外れるのかなとも思いますけどね(^^;)

 

私がこの物語がすごいなーと思うところは、さきほど言ったように

 

この主人公の「ぼく」は小林真じゃないから、「ぼく」が小林真をすごく客観的に見ているところ

 

が面白いと思うんですよね。ほんとに。これ

 

アドラー心理学の「課題の分離」

 

をそのまま「ぼく」が実践しているんです。

 

主人公「ぼく」は小林真ではない、と思っているので、真の父、母、兄、学校のクラスメイト、先生、そしてないによりも「小林真」自身をすごく冷静に客観的に分析し見ている。そして、「ぼく」が思うままに行動して冷静に判断し、「真」とは違う選択をし実行する、ということができてしまうんですね。

 

もし、小林真が死ぬ以前の「真」のままであったら、

 

家にいない父とふれあいのなさへの寂しさ

母の不倫の現場を見てしまって得た悲しみと怒り

いじめにあっていた悲しみ

好きな女の子の援助交際を知ってしまうつらさ

 

といった、負の感情に支配され、自分の感情に押し流されてしまって、自分を見失う。実際に自殺までするのですけれど。

 

でも「ぼく」は「小林真」ではないので、この負の感情に引きずられることなく、たんたんと現状を受け入れ新しい小林真の人生を歩んでいきます。(細かいところをいうと「ぼく」にもそれなりの「考え方、常識」がある設定なので、少し感情を持った行動をしていきます。)

 

友だちもできるし、援助交際をしている女の子を現場からひっぺがしてお茶したり・・・、同じ状況でも自分のとらえ方が違うとこうも行動が変わるのかーというところが、このカラフルの面白いところだと思います。まさしく状況は同じなのに、人生のやり直しが行われていきます。

 

さて・・・、この主人公「ぼく」は上記したように違う小林真の人生を歩んでいきます。でもこのホームステイの目的

 

前世で犯した過ち

 

っていうのが一向に「ぼく」はわからない。どうやって「ぼく」がそれに気がついていくのか。そして、それがわかった「ぼく」はどうなるのか・・・・。最後まで目が離せないストーリーとなっています。

 

よかったら「カラフル」を読んでみてくださいね。

ほんとおもしろいですよ(^^)

 

子供にも大人にも勇気を与えることができる名作だと思います。

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