最近、森 絵都さんが書いた小説 カラフル を読んでから、もう一冊、森 絵都さんが書いた小説を読んでみたくなって選んだのが、この「風に舞いあがるビニールシート」でした。
たまたま「これいいかなー」って手に取って買った後でわかったのですが、この小説、森 絵都さんが第135回 直木賞を受賞したときの作品でした。
この本は短編集になっていて
・器を探して
・犬の散歩
・守護神
・鐘の音
・ジェネレーションX
・風に舞いあがるビニールシート
の計6つの物語が入っています。
この中でやはりといいいますか、秀逸なのはやはり
風に舞いあがるビニールシート
でした。
「風に舞いあがるビニールシート」のあらすじ
ビニールシートが風に舞う。獰猛な一陣に翻り、揉まれ、煽られ、もみくしゃになって宙を舞う。天を塞ぐ暗雲のように無数にひしめきあっている。雲行きは絶望的に怪しく、風は暴力的に激しい。吹けば飛ぶようなビニールシートはどこまでも飛んでいく。とりかえしのつかない彼方へ追いやられる前に、虚空にその身を引き裂かれないうちに、誰かが手をさしのべて引き留めなければならない。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に職員として働いている主人公 里佳は、2年前に別れた夫 エドの訃報を3ヶ月前に聞いたときから深い悲しみにつつまれていた。
エドとの出会いは10年前のUNHCRの求人面接時の面接官の1人として出会った。入所してからしばらく経ったある日、ひょんなことから二人は一夜を過ごす。その1年後に結婚をして結婚生活を過ごすのだが、各国の難民対応に従事しているエドはほとんど日本にいず、7年間の結婚生活のなかでエドと会えた日はわずか25日。その共有した時間の短さに耐えきれず彼を愛しながら里佳は離婚を決意する。その後アフガニスタンに渡ったエドはそこで難民をかばって命を落としたのだった。
落ち込む里佳を食事に誘った上司 リンダは、彼女に1つの提案をする。
アフガンでエドを失ったばかりのあなたにこんな話は酷かもしれないけど、あえて言うわよ。里佳、アフガンに行かない?
「風に舞いあがるビニールシート」を読んで思ったこと(感想)
6つの物語はそれぞれ全く違ったシチュエーションの物語で、すべての物語のあらすじを書くとなかなか大変だったので、あえて「風に舞いあがるビニールシート」だけ書かせていただきました。
6つの物語に出てくる主人公が全く性格も性別も違うので、1つの話が終わって次の小説を読むときに頭を切り換えるのが大変でした。そういう意味では、いろんなシチュエーションを書いていく森 絵都さんはすごいなーって素直に思いました。
私は男なので今回のような感想をもったのですが、もしかすると女性の視点から見たら6つの物語も違う風に見えるかもしれません。
さて、この「風に舞いあがるビニールシート」に話を戻しますが、これはすごく胸を打つ物語で、地下鉄の列車で読んでいた私は思わず、ある場面では泣きそうになりました。
作中では里佳とエドとの新婚生活が描かれていて、エドの話もたくさんでてきますので、なぜ彼がほとんど難民がいる場所へ向かってしまうのかの理由ものちに明かされていきます。彼を愛しているのになかなか会えないジレンマに陥る里佳。好きなのに別れを選ばなくてはならなくなった悲しみ。すれ違う男女の価値観の違いを丁寧に伝えながら、それでも懸命に生きる主人公たちを描いていました。
この作品、夜のシーンが多いので、会社の休憩時間に読んでいたときは、ちょっぴり恥ずかしくなって本を閉じちゃったこともあります。小説 カラフル は中学生の物語だっただけに、その大人なストーリーとのギャップにも驚きました(^^;)
「風に舞いあがるビニールシート」はとてもオススメです。美しく愛しく感じる大人の小説だと思います。
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