涸沢へ向かうためには、この横尾大橋を渡っていきます。いよいよ本格的な登山のスタートです。河童橋から横尾までの道のり(といっても、すでに約10kmは歩いてきていますけど・・・)はウォーミングアップというところです。
まずは、横尾(標高 1,620m)と涸沢(標高 2,309m)の中間地点にある本谷橋(標高 1,780m)を目指します。横尾~本谷橋までのコースタイムは1時間20分です。
今回の登山コース(横尾~本谷橋~Sガレ~涸沢ヒュッテ)を再度掲載します。この地図が今回ほど役に立ったことはありませんでした。
横尾谷を通り本谷橋に向かいます
横尾大橋ってきれいですね~!こうやって見ると絵になるなぁ。
横尾大橋から南側を見た写真です。川がきれいです(^^)
いいながめだなぁ。6月は涼しくて気持ちいいです。
横尾を出て30分くらいはやや平坦な道を歩いて行きます。このあたりは横尾谷とよばれているようです。この横尾谷に沿ってブナ林の登山道を進んで行きます。
ガイド本などにたまに「横尾岩小舎跡を過ぎると」と書いてあるものがありますが、初めて来た人には全くわかりません。そもそも、その小舎跡がここですよ~という案内もどこにもありませんので、探しても無駄です。
穂高連峰有数の大岩壁、屏風岩を左手に見てまわり込みながら登っていきます。
横尾から30分ほど歩くと、いよいよ登山道らしき状況になってきます。
横尾谷の登山道はこんな感じですね。
途中から雪が登山道に見えはじめたので、私はここからアイゼンを装着しました。
一気に開けた場所に来て、一面が雪の場所に出てきました。川も雪に隠れて見えない状況になっています。
そういえば、そろそろ1時間半くらい歩いたのですけれど、一向に本谷橋が見当たりません。下の写真のように、不思議な鉄のオブジェがあるのですが、橋ってどこにあるのでしょう・・・。
ガイド本には次のように書いてあります。
ふたたび樹林帯に入りブナ林を過ぎ、川の流れが足下に見えはじめれば、コンパクトな吊橋の本谷橋に着く。ここは横尾、涸沢間のほぼ中間地点に当たる。橋を渡った下の河原は格好の休憩ポイントになっており、多くの登山者がここでくつろいでいく。
・・・えっと-、
本谷橋ないんですけど・・・(^^;)
休憩ポイントってなんですか?
このあたりから登山道がわからず10分ほどボーっとしてしまいました(^^;)
やばい。どうしよう・・・。
時間は今14時半か・・・。
あまり迷っている時間もないなぁ・・・。
涸沢ヒュッテに聞こうにも携帯の電波が届かない(横尾から涸沢の間は電波が届きません)。
一応、印らしきものが着いている石は見つけたんだけど、書いてある意味がわからない・・・。
そのあと10分ほど経って、1組の登山カップルが現れました。
カップル「こんにちは!涸沢まで行かれるんですか?」
私 「はい。ここから道がわからなくなってしまって・・・」
カップル「ひとまず私たちが先に雪の上を歩いていってみますね」
どうもこの雪の上を歩く模様です。ひとまず付いていくことにしました(正確にいうとどんどん先に彼らは行ってしまいました)。道なき道を進み始めます。
実は冬は本谷橋は解体されています
少し話は脱線して後日談です。涸沢ヒュッテの方にこの状況を聞きました。すると
「あぁ、そうです。この鉄二本のところが本谷橋があるところなんです。冬は見ての通り雪が積もってしまうので、橋を解体しているんです。」
なるほど・・・・。どうりで橋がないわけだ・・・・
私は涸沢ヒュッテの方に、
「今回初めて来たんですけれど、この本谷橋がなかったので、次にどこに向かえばよいかわかりにくく20分ほど止まっていました。何か行き先がわかるものがあるといいかもしれません。」
と伝えました。
翌日の下山時、同じ場所に来てみると、涸沢ヒュッテのみなさんが本谷橋を組み立てているところに出会いました。元々この日に予定をされていたのかどうかはわかりませんが、こうやってこの涸沢コースの基点として有名な本谷橋は、実はみなさんの努力で支えられていることがわかりました。感謝感謝です。
本谷橋から涸沢へ向かいます
本谷橋から涸沢まではコースタイムは1時間40分ですが、この時点では雪の上を歩くのでどのくらいで涸沢に着くのか予測できません。標高も本谷橋(1,780m)から涸沢(2,309m)の高さまで一気に登ります。
さあ、登山を続けます。
本来の本谷橋がある場所から、たぶん川の上となるんでしょうけれど、雪の上を歩き始めると、複数の足跡が私にもわかるようになりました。
みんな涸沢へ向かう人たちはこの足跡を通っていくようです。途中で赤い印が雪の上に描いてあるのもわかってきました。ここからは、地図の登山道の情報はあまり役に立ちません。この雪の足跡(トレース)をだどりながら歩いて行きます。
本来は急な登りが本谷橋から始まるわけですが、もろにこの雪原そのものが急登となっています。
めっちゃ坂がきつい・・・(T T)
あっ、赤い印があった。こっちでいいんだな・・・。
こうやって写真で見るとうっすらとトレース跡が確認できます。実際の現場にいると、私がまだ雪山に慣れていないせいかよくわからなかったんです。そういう意味でも、実際に山に登る場合は最初は雪がない状態で登山コースを覚えた方がいいことを身をもって体験しました。もしくは登山コース経験者と一緒に雪山を登ることは大切なんですね。
このときにやっぱり重宝したのは、
地図
です。もちろん、通常でも地図で登山コースを確認しながら登りますけれど、今回ほど
自分が今どこにいるのか?
自分の付近の場所の山はどれか?
などを認識しながら登ったことはありませんでした。地図は地図でも「紙の地図」がやはり重宝します。こういった山では携帯の電波が届かないので、
携帯にGPS機能が付いていたとしても携帯の電波が届かないため地図データのダウンロードができない(仮に携帯の電波がかろうじて届いたとしても、バッテリーの消耗が早くなり、いざというときに使えなくなる可能性が高い)
ということがわかります。ですから、みなさん、登山には紙の地図を持って行きましょう。そして地図の見方もきちんと理解することがとても大切です。最近ではヤマレコなどのアプリで事前に地図をダウンロードできるのもあるにはありますが、携帯のバッテリーはすごく大切なので、やっぱり紙の地図をオススメします。
ちなみに同じ場所から下を見ると雪のトレースあとがはっきりわかります。下りのときは見失うことは(晴れていれば)ないようです。
ちょっぴり休憩・・・。
ぼんやり春がまだ来ていない山々をみつめる・・・・(これで6月なんだよなぁ・・・・)
休憩していると後ろのほうから一人の登山者が登って来ました。
登山者 「まだ宿の予約をしていないんだけど大丈夫かな~?」
私 「たぶん大丈夫だと思いますよ」
・・・この山に思いつきでくる人がいるのか・・・・(^^;)
雪の上を歩いている途中、写真の真ん中下くらいに岩がぽっかり頭をのぞかせているところが見えてきました。
ちょっぴりこの岩の上で休憩します。あとで分かったのですが、これが俗に言う
Sガレ
なのだそうです。Sガレとは、「屏風岩側からS字状に流れ出たガレの押し出し」のことをいうそうですが、雪の世界ではただの岩でございました。おそらくもし真冬であれば、このSガレも雪に埋もれて姿がなくなるかもしれませんね。
下の写真はSガレにもっと近づいたところです。
Sガレを過ぎると、いよいよ涸沢が見えてきます。とはいうものの、まだすぐには涸沢ヒュッテは見えてきません。結構ここからが長いんですよね・・・。雪で足がだんだん疲れてきました。
あっ、もしかしてあれが涸沢ヒュッテでは・・・!?
ふと後ろを振り返ると、ここまで登ってきたんだなぁと実感しながら眺めていました。
もうすぐ、もうすぐ涸沢ヒュッテ!
ようやく涸沢ヒュッテに到着しました!感動~!(T T)
よくがんばった!私!
自分の足で涸沢ヒュッテについたときには、私は本谷橋から2時間20分かかっていました。到着時刻が16時45分でしたので、この北アルプスでの登山スケジュールとしては遅いとしかいいようがありません。少なくとも16時にはこういった山小屋などに到着すべきでしょうから・・・。
でも、よい体験でした。これで自分の雪道のタイム感覚もわかりました。今後はこの体験を元にスケジューリングをしていくことになるでしょう。
これから人生で初めての涸沢の夜をむかえます。
コメント